シュペートブルグンダー ペーター・ワーグナー Peter Wagner
シュペートブルグンダー ペーター・ワーグナー Peter Wagner
レス土壌の区画。ビンテージにより比率は異なるが、10~20%を全房発酵。3~5日 マセラシオン。 生酵母で発酵が始まるとルモン タ ージュを行い、極力ワインを動かさず、抽出を抑える。古いバリックで18ヶ月熟成。瓶詰め時までSO2は一切使用せず、瓶詰め時に 少 添加。SO2を使わない以上、樽が常に満たされているように注意する。
ペーター・ワーグナーについて:
ドイツの火山性土壌といえば、ドイツ最南端バーデン地方のカイザーシュトゥールが筆頭に上が る。このカイザーシュトゥールにあるオーバーロートワイル村で唯一ビオディナミの若手生産者が ペーター・ワーグナーだ。ガイゼンハイムで醸造学を学んだ後、彼はソノマのロシアンリヴァーや ニュージーランドのヴィッラ・マリアなどで働いた。最終的に、バーデンの大御所であるフラン ツ・ケラーで働きながら、自分のワイン造りに着手することになる。実践を学ぶ上で彼が新世界を 選んだのは、新世界の多くのワイナリーが何もないところからワイナリーを設立するため、ワイン畑の仕立て方やワイナリーの設計、 経営などについてより実践的かつ詳細に学べると考えたからだ。旧世界では、既に多くの銘醸畑が存在し、ワイン造りが確立されてい るためそのような機会は少ない。その上、新世界のワイナリーの多くはフランスを模範としているため、実際にフランスにいるよりも 多くフランスのワイン造りについて学ぶことができたという。 カイザーシュトゥール一帯には比較的若い火山岩土壌が広がっており、山岳地帯が始まるシュヴァルツワルトからは10km以上離れてい るため、雨はあまり降らない。北から南に長く伸びる山側の生産地より乾燥しており、そのためブドウが良く熟す。数十年前に気候が より冷涼だった時代には、これがカイザーシュトゥールの長所ではあったが、気候変動で気温が上昇している中、生産者には柔軟な対 応が求められるようになった。カイザーシュトゥールにはもともと協同組合がワインを造る伝統があり、ペーター曰く、大きな傾向と して協同組合が造るワインには過熟気味で、果実味重視のワインが多く、この土地の良さを伝えられていない。むしろ量産型という古 来からのイメージを強化することになっている。そんな中、ペーターが特に重視しているのは収穫のタイミングであり、ブドウの酸味 をしっかり確保しながらも果実も果梗も十分な熟度に達しているタイミングを見計っている。温暖化で気温が上がり、カイザーシュトゥールはドイツ国内で最も暑い地域の一つとなったが、その逆境を逆手に取れば秀逸なワインが できることを彼は証明している。 カイザーシュトゥールの風光明媚なテラス状畑はこの地域のシンボルにもなっている。この風景 は、農業の生産性を向上させるために導入された「耕地整理」の産物である。効率性という観点か らは成功した施策ではあったが、生態系には破壊的な影響があった。オーバーロートワイルの土壌 の70%はレス土壌から成る。レス土壌は保水性に長けており、石灰が豊富で肥えた土壌ではある が、「フムス」と呼ばれる微生物のコロニーが表土に存在することが前提である。耕地整理では、 土を掘り返し、微生物が多く活動する表土を地中深くに埋めてしまった。このことにより、耕地整 理された土地は一瞬にして不毛な土地に様変わりした。1cmのフムスが形成されるのには約10年か かる。失われた表土は30cmはあったということだから、元の状態を取り戻すまで如何に長く時間 を要するかが分かる。ペーターが所有する畑は一部を除き、耕地整理がなされる前の畑だ。ペー ターが新しい区画を購入する際は、土壌が大きく傷付けられていないことを重視する。 シュペートブルグンダーに関して、ペーターは主にドイツのクローンを使用している。ドイツのク ローンは往々にして批判的に見られるが、そのポテンシャルを十分に引き出して偉大なワインを造ることは可能だと考える。フランスのクローンでしか最上のピノ・ノワールを造ることができない と確信していたマスター・オブ・ワインのコンスタンティン・バウム氏は彼のセラーで単一畑のワインを試飲した際、15年来信じてきたことが崩れ去り、しばらく樽の前で佇んでしまったという。しかしながら、ドイツのクローンはどうしても不安定な要素があるた め、今後はフランスのクローンも導入していくつもりだと話す。 まだワインを造り初めて数年という彼のワインは既に入手困難になり始めている。多くを購入できないのは残念だが、彼の今後が楽し みである。
タイプ:赤
ブドウ品種:シュペートブルグンダー
甘辛度:
生産国:ドイツ バーデン
熟成度:
生産者:ペーターワーグナー
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